「上を狙うチームには必ずと言っていいほど左かサイドのピッチャーがいる。これを攻略できないと勝ち上がることができないんです」。そう話すのは今回、指導・解説を務めた福知山成美高校の田所先生。自身も社会人までプレーし、指導者としても15年以上のキャリアを持つ同氏ですが、ここ数年でピッチャーは非常に多様化しているといいます。「相手はどうにかしてバッターの目線を変えようと、あれこれ手を尽くしてきます。ならば、こちらもその対策をきちんと練らなくてはいけません」。だからといって、特別な対策や練習が必要なわけではありません。普段の練習を、普段の試合を、少し考え方を変えて臨むだけで結果は大きく変わってきます。たとえば、多くのピッチャーは外角低めを投げる練習をしています。しかし、バッターはその練習を積んでいるわけではない。マシンの設定も、大概は真ん中付近にされている…これを変えるだけでも試合の結果が変わってくるはずです。相手に合わせるところ、相手を幻惑するところ、ちょっと考えなおしてみれば「なるほど、そうだよな」と思うようなことばかり。そんなポイントが、この作品には詰まっています。田所先生のユニークな点は、グアテマラで学んだキューバ流の野球にルーツがあります。野球は対戦を楽しむ、ゲームを楽しむもの。そのなかに醍醐味があるといいます。ピッチャーに勝つ。その面白さを、この作品から感じてみてください。