英語で授業をすることが一般的になりつつある中、定型文のやりとりを学ぶロール・プレー的なコミュニケーション授業から、生徒自ら意見を持ち、それを伝えていく授業、すなわち「考える」活動を含んだ授業実践へ発展させていこうという動きが全国各地で見られます。
「クリティカル・シンキング」はよく知られたスキルですが、英語の授業で実際にどのように指導するのかという例はなかなか知る機会がありませんでした。この授業では、最初に「よくある」形で生徒に考えるテーマを与えてみました。生徒は考えるポイントが見つけられず、議論が散漫になっている様子をご覧ください。
クリティカル・シンキングはその名の通り、プラスの側面とマイナスの側面を「区別」しながら考えていく作業です。ですから、初期段階では、そのような考え方ができるようにトピックを適切な形で提示する必要があります。次に、少々範囲の広いトピックが与えられても議論すべき点を見つけ出す力を導くような訓練が必要になります。
「考える」授業を調査、発表と連携させて、プレゼンテーションまでさせてしまおうという授業が多く見られますが、それは性急に過ぎます。考える作業は、調べる作業とは全く別ですから、「考える」作業にフォーカスを当てた授業が必要です。
つまり、クリティカル・シンキングの初期の訓練においては結論に到達する必要はなく、結論を出すためにはどんなことを知っていなければならないか(=どのようなデータが必要か)といったことを導き出す力を育成することが最優先なのです。
この授業全体において、辞書を使わないで考えを述べるように促しました(J-E Exercise)。将来ディスカッションも英語で行う段階に入ったときに、クラスメートに意見が伝わるようにするために大変重要なスキルです。本授業では、通常は5回ほどの授業で行う訓練を1回に凝縮しておりますが、実際の授業では
①プラス・マイナスを見つける
②議論を進めるために必要な情報を見つけ出す
と段階を分けて指導することが望ましいと考えます。
<はじめに>