予測する脳を重視した姿勢制御訓練
日常動作は姿勢制御の積み重ねです。例えば、手で物を取ろうとする場合、上肢の筋肉の活動に先立って、身体の動揺を予測して、身体を安定化するために、体幹・下肢の筋肉がいち早く活動します。
このような観点から、体幹・下肢の筋は、局所を動かすために存在するというよりも、目的の動作を遂行するために身体の動揺を予測して制御し、平衡を維持する姿勢制御筋として捉えるべきだと考えます。
姿勢制御のためには、次の3つの機能が重要です。
1,地面把握機能を向上させる
2,支持足の機能を生かす
3,不意外乱へ対応する
この3機能のためには股関節制御、足関節制御の機能が重要です。
姿勢制御には股関節制御と足関節制御があり、小さい外力やゆっくりとした外乱に対しては足関節制御。また、大きい外力や、急激な外乱に対しては股関節制御が優位となります。このように、股関節制御と足関節制御は、身体に外乱が加わった場合など重心の支持基底面内からの逸脱を防ぐ際や、新たな支持基底面へ重心を移動させる際などに機能します。
これらを通して、予測可能な脳を育てることで、より的確な姿勢制御を目指します。
この作品では《1,地面把握機能を向上させる》《2,支持足の機能を生かす》《3,不意外乱へ対応する》ための訓練を、この順序で理論を解説し、具体的な訓練方法について容易なものから順に紹介しています。
ここで紹介している個々の訓練は全体の部品にしか過ぎません。訓練対象者の要求度、年齢、疾患に応じて、これら部品を選択し組み合わせることで、全体としての訓練メニューが出来上がります。
対象者に合った訓練プログラムを、独自に組み立てられることを願っています。 是非、姿勢制御の向上にお役立てください!
■指導・解説:
井原 秀俊(九州労災病院 勤労者 骨・関節疾患治療研究センター・センター長/整形外科医師)
森口 晃一(福岡県済生会八幡総合病院/学術推進本部副部長/理学療法士)
■実技:
田川 真理(福岡県済生会八幡総合病院/理学療法士)
■撮影協力:
福岡県済生会八幡総合病院